秋の日浦
国道317号線から見上げる山々がわずかに黄金色に輝き始め、山里の学校にも秋の気配が感じられるようになってきました。朝の冷たい空気が肌に触れると、夏の暑さが過ぎ去り、秋の静かな到来を実感します。窓を開ければ、風に乗ってくる落ち葉のカサカサとした音や、時折聞こえる遠くの虫の鳴き声が、秋ならではの静寂と自然の豊かさを教えてくれます。
秋は、山の学校にとって特別な時期です。児童生徒たちは、理科の時間で、山中に点在する緑の変化を目にしながら、植物の葉の色が変わる理由を考えたり、校内に飛んできた秋の虫たちを優しく手で捕まえたりしています。中には、タブレットで秋の自然の移り変わりついて調べている子もいました。学校周辺の日浦地域全体が教科書となり、実際に見て、触れて、体験することで学びが深まっていきます。9月末には、各学年で散策に出て、タブレットを用いて真っ赤な彼岸花の写真を撮影しました。中には真っ白の彼岸花もありました。12月のふるさとフェスティバルでは、優秀作品が表彰されます。また、先日は、生活科の授業の一環で、低学年の児童たちが校外学習に出て近くの歩道を散策しました。たくさんの種類の落ち葉を見付けましたが、まだまだ暑く、河川の流れに足を浸して遊んだそうです。校内に戻った後、彼らはみんな笑顔で「楽しかった。面白かった。」と、清々しさを口にしていました。中学校では新人大会に参加し、ソフトテニスの熱戦を繰り広げました。
この季節には、両校舎の裏にある石手川と福見川も穏やかに流れています。夏の間、激しい雨で水位が上がっていた川も、今はその勢いを落ち着かせ、清らかな水がゆっくりと岩を滑り流れています。この川沿いでの静かなひとときは、子どもたちだけでなく教職員にとっても大切なリフレクションの時間でもあります。児童生徒のバスの送迎時に小中教職員は情報交換をするだけでなく、川辺を歩きつつ、自分の思いに耳を傾けることで、日々の教育活動を振り返り、心落ち着ける時間を過ごしています。
教室の中もまた、秋色に染まってきました。小中学校ともに、国語の読み物教材の時間には、秋にちなんだ物語に親しんでいます。教室の窓から見える山の風景は、まるで絵画そのもの。中学校の生徒たちは、美術の授業で、日浦の風景写真を基に粘土で公共物を創るというパブリックアートに挑戦しています。また、家庭科の調理実習では、地元の秋の味覚を使った料理にも取り組んでいます。1学期末には、学校で収穫したじゃがいも等を近隣の食堂に提供していたのですが、その店舗では、そのスイーツが好評で、材料がなくなり、品切れとなってしまったという情報も入ってきました。日浦の短い秋は「読書の秋」「芸術の秋」とも言えますね。
運動会に向けて
本日、運動会に向けての総練習(予行練習)を終えました。少人数そして小中合同という環境で、松山市内の中大規模校とは違った特色及び留意事項を見直しました。10/5の本番に向けて、教職員一同、小中体育主任さんを中心に最後の指導と支援に取り組み、児童生徒の「え」がおあふれる運動会を創り上げたいと思っております。よろしくお願いいたします。
さて、先週の全校練習の際に、1時間程度でしたが、近隣の五明幼稚園の園児さんが見学に来ました。全校のダンス練習を見学していましたが、特に運動場で練習をしていた赤組9年生女子リーダーに鋭い視線が注がれていました。園児にとって、人前で声を出して指示をするのは、先生しかいないという思いだったのでしょう。あのお姉さんはなぜ前にいるのだろう? マイクで何と言っているのだろう? 最初は、緊張して硬そうな表情をしていました。が、女子リーダーの分かりやすくてきぱきとした指示、音楽に合わせたリズミカルな動き、満面の笑み、そして全児童生徒を的確にリードする姿に、一種の憧れを抱いたと思われます。しばらく黙って見入っていましたが、最後には手拍子とともに笑って踊り始める園児の姿が・・・。9年生が考案したダンスの動きが、園児の心をも魅了したのでしょう。そこには、まぎれもなく小さな彼らにとって憧れの的となるスーパースターの女子生徒がいました。帰り際に園児は、彼女に抱き着いていました。スーパースターの一挙手一投足が見る者の心を引き込み、元気と勇気と希望を与えてくれます。今の私たち日本人が「大谷翔平」に感じている想いと、共感する部分がありますね。
全児童生徒の皆さんには、「大谷翔平」に負けない存在となって、日浦から全世界に発信してほしいものです。小学校玄関前に「主人公」という石碑がありますが、今回の運動会では、私は、児童生徒全員が「主人公」を超え、「大谷翔平」をも凌駕するようなスーパースターとなって最高のパフォーマンスを発揮してほしいと願っています。合言葉は『全身全霊 仲間とともに 心に刻め日浦魂』です。
最後になりましたが、保護者の皆様、地域の皆様には、日頃より、運動会に向けての教育活動に御理解と御協力を賜り、心より感謝申し上げます。今年の酷暑の中、9年生を中心に、1学期末から児童生徒全員で表現できるダンスを考案して参りました。9年生が小学校の各教室に分かれて優しく丁寧に教える光景は、素敵というより感涙圧巻でした。当日は、最上級生の日浦魂が結実し、披露する場となるでしょう。
なお、先日の講演会と同様、QRコードにて皆様からの応援メッセージを頂戴したいと思っております。子どもたちのはつらつとした動きを御覧いただくとともに、秋風吹く山里の小さな運動場一杯の御声援を賜り、子どもたちの熱意を後押ししていただきますよう重ねてお願い申し上げます。
2学期始業式校長式辞より
皆さん、おはようございます。さあ、今日から2学期です。有意義で充実した夏休みを送ることができましたか? 約束通り、9月2日に、皆さんの元気な顔を見ることができて、とても嬉しく思います。
さて、今日は、校長先生が夏休みに学んだことについてのお話をします。それは、校長先生が夏休み中に見た、あるYouTubeについてです。「腰塚勇人」という名前で、インターネットで調べると、神奈川県出身の元先生という内容が、すぐ出てきます。この方は、中学校の体育の先生だったのですが、スキーで転倒し、首の骨を折る大けがをして全身まひ(動かない)の状態になってしまいました。一時は生きる望みを見失っていたようです。しかし、家族や周りの人々の支えや、担任していた生徒からの励ましを受け、苦しい懸命のリハビリを行って、4か月後にやっと歩けるようになり、必死の思いで復帰しました。その後、腰塚先生は、自分の経験を伝えるため全国で講演活動を行っています。そこでは、次のようなことを言っておられます。
「口」は、人を励ます言葉や感謝の言葉を言うために使おう。「目」は、人のよいところを見るために使おう。「耳」は、人の言葉を最後まで聴いてあげるために使おう。「手足」は、人を助けるために使おう。「心」は、人の痛みが分かるために使おう。
という5つの内容です。
皆さん、どうでしょうか。人を励ますような言葉、感謝の気持ちを伝える言葉をきちんと言えていますか? 他人のよいところを見ていますか。他人のすばらしいところを見つけていますか? どんな場面でも話を最後まできちんと聴いていますか? 困っている人がいたら手を差しのべ、足を運んで手伝っていますか? 悩んでいる人の心の痛みを共感してあげていますか? 日浦小中の児童生徒の皆さんは、日頃からしっかりできている様子が感じられます。ですが、もう一度、自分を振り返ってみる機会としてください。そして、これから行事の多くなる2学期です。この5つの視点を大切にしながら、日浦小中全員で充実した学校生活を送ってほしいと思います。是非、インターネットで検索して一人一人がこの腰塚先生の想いに触れて、考えを深めてほしいと願っています。もう一度言います。「口」は、人を励ます言葉や感謝の言葉を言うために使おう。「目」は、人のよいところを見るために使おう。「耳」は、人の言葉を最後まで聴いてあげるために使おう。「手足」は、人を助けるために使おう。「心」は、人の痛みが分かるために使おう。です。2学期も頑張りましょう。
1学期終業式校長式辞より
校長先生には、1 日に「3つの楽しみ」があります。1つ目は、すがすがしい日浦の自然を感じることです。だんだん暑くなってきましたが、日浦の朝は大変爽やかです。川の流れや虫の声も聞こえませんか。ちょっと目をとじて耳をすましてみましょう。木々の緑、鳥のさえずり、川のせせらぎ、風のふく音が心地よい季節となりましたね。毎日、このような自然を五感で感じとるのが、校長先生はとっても楽しみなことなのです。
2つ目は、朝、登校してくる小中学生のみなさんと元気な挨拶を交わすことです。日浦小・中学校は、他の学校と違って、ほとんどの人が市内からバスで通学してきます。それぞれが違う地域から、学びに集まって来ているのです。先生は、みなさんが元気で生き生きと挨拶してこの日浦に集まり、授業中の学習や委員会活動、部活動などに頑張る姿を見るのが何よりの楽しみなのです。
3つ目は、真剣な気持ちでしっかりと学習している学びの様子を見ることです。例えば、小学校では、道徳の時間のお話の主人公の気持ちを考え、「自分だったらどうするだろう・どうしたらよいのだろう」と悩み、考えている姿。算数の時間で、自分が考えた問題の解き方を一生懸命に伝えようとする姿。理科の観察の時間に、細かいところまで植物を見て書いている姿。中学校では、道徳の時間に議論しながら考え、文章を書いている姿。数学の時間に、難しい問題にチャレンジしようとする姿。タブレットを活用して、友達と対話をしながら入力したり話合いをしたりしている姿。美術の時間に、細かいところまで集中して作業している姿。このような、みなさんの「キラリと光る学び合いの瞬間」・「主体的・対話的に学んでいる瞬間」をたくさん見つけました。どの学年も、しっかり学び、自分の力を高めていました。
今、紹介した「3つの楽しみ」のうち、夏休みになると最初の一つしかなくなるのが、校長先生は、ちょっと残念なのです。そこで、先生からみなさんへの宿題を出します。それは、いのちの「い」です。交通事故や水の事故、熱中症に注意して過ごすことです。そして、夏休みの生活のきまりを守って過ごし、楽しい思い出をつくること、1学期で培った力を夏休みを通して熟成させること、定着させることです。そうすると、また2学期には校長先生の「3つの楽しみ」があります。そして、8月29日の登校日には、元気で全員が登校することを願って式辞とします。
日浦小中 学びの勧め(6/15学校説明会での校長挨拶より)
本日は、ようこそ日浦小中学校においでくださいました。私は、この4月より勤務させていただいております校長の日野伸介と申します。どうぞ、よろしくお願いいたします。
今日は1~9年生の全学年の授業を公開いたしました。日浦ならではの「魅力」を感じていただけましたでしょうか。今日は、中学校が7年生から9年生の合同による保健体育、小学校では、中学校教職員による2年生の音楽科、5年生の外国語活動、4年生・6年生では学級担任以外の専科の教職員による授業を参観していただきました。本校の教育計画に関しましては、HP上部の「What is 日浦小中学校」から御覧ください。特に今年度は「いあうえお」という言葉を児童生徒と教職員で共有するフィロソフィーとして、学校の教育計画の中心に置いて教育活動に取り組んでおります。
本校の魅力を3つお話します。
1つ目は、何と言っても、この豊かな自然の中での学習や体験活動の充実です。山紫水明の自然にあふれた教育環境です。朝、私が出勤しますと、まばゆい朝日、やや肌寒い風、やきつくような一面の緑の木々が目に入って参ります。目を閉じましても、鳥のさえずり、川のせせらぎが聞こえて参ります。わずかですが、樹木の香りも嗅覚を刺激します。子どもたちを育てる環境としては、最高の自然環境に恵まれているとは思いませんでしょうか。都市部の喧騒やストレスから離れ、落ち着いた環境で学びを深めることが、義務教育の時期には大変よい影響を与えることはまちがいございません。
2つ目は、この日浦の里の地域社会と密接に結びついていることです。先々週金曜日の夕刻には、ホタル観賞会を実施しました。地域の皆様方やPTAの方々、関係者の皆様の御尽力で、幻想的で何とも言えない神秘的な瞬間を目にすることができました。他にも、小学校の校区内探検や名人さがし、地域に根ざしたSDGsの指導、中学校での炭焼き指導やヒメユリの播種、小中学校合同で実施する田植えと稲刈りなど、日浦ならではの学校行事に加えて、春のたけのこ掘りや夏の川施餓鬼などの地域行事もさかんです。
3つ目は、学級の人数が少ないため、一人一人が主人公となり、教師もきめ細かい指導ができるという点です。現在1年生から9年生の各学級の人数は、最小は5人、最大で11人です。例えば、学習面でのつまづきや困り感に寄り添う形で対応することができます。本校では、教師が手厚く丁寧に教えることができるため、子どもたちを導きやすい教育環境だと言えます。
さて、本日の参観日ですが、「保護者交流会」という形で実施しております。PTA会長さんをはじめ、保護者の方々のお話を聞いていただいたり、疑問点は質問をしていただいたりしながら日浦小中学校への理解を深めていただければ幸いです。立地は、石手川ダム上流という山間部ではありますが、市役所第4別館からは約45分、石手の岩堰のバス停からならば約20分(費用は松山市負担)で到着です。徒歩での登下校は、バス停から小中学校までのわずか数分なので熱中症の心配もありません。
これを機に、本校への入学を希望してくださる方が一人でも増えると大変うれしいです。皆様、是非、日浦へ来て学びましょう。
★ 学校長より
今も、校長室裏の福見川から瑞々しい流れのせせらぎが耳に届きます。松山市立日浦小学校・中学校ホームページを御覧いただき、誠にありがとうございます。本校は、近代日本の夜明けとも言うべき明治5年の学制発布を受けて、維新直後の明治7年に、藤野尋常小学校として創立されました。以来、脈々と受け継がれた日浦愛を紡ぎつつ、多くの卒業生を輩出して参りました。その後、戦後間もない昭和22年に、日浦中学校を併設しました。時代は平成へと移り、平成15年には市内全域から児童生徒の受け入れを開始、翌年16年には、校長が小中を兼務することとなり、一層、小中連携及び9年間の学びを意識した学校運営が行われるようになり、令和の今に至っております。
これまで、石手川上流の山里にて教育活動を続けることができましたのも、「少人数のよさを生かし、一人一人に寄り添う学校でありたい。日浦だからできる9年間を見通した学びを展開したい。」という歴代校長及び教職員の想いが、地域の皆様や多くの保護者の方々から御支持いただけたものと感謝しております。しかし、少子化と高齢化の波は、この自然あふれる日浦の地にも容赦なく押し寄せて参りました。児童生徒数の減少は、学校の存続に直結する大きな試練です。また、昨今の山積する教育課題に真っ向から取り組むべく、少人数ではありますが、小中の教職員が強固な絆で協働し、若手・中堅・ベテランの粋を結集した学校づくりに全力投球しております。今までも、地域の皆様方のお力添えをいただきながら、河中緑の少年隊及び日浦緑の少年団活動、田植え、炭焼き、ホタル、ヒメユリの保護活動など、日浦ならではの教育活動にも尽力してきました。最近では、児童生徒の1人1台端末の導入に加えて、小中の教職員がクラウド上での業務展開を目指し、悪戦苦闘と試行錯誤の毎日でございます。日浦の子どもたちの輝かしい未来を育むべく 「い」命 「あ」挨拶 「う」海山川(自然) 「え」笑顔 「お」思いやり という五つの言葉に込められた願いを、児童生徒と教職員で想いを共有するフィロソフィーとし、教育という大仕事に邁進していく所存でございます。そして、何よりもこの地を慈しむ地域の皆様方の温かい御支援とお心遣いに励まされておりますことに、厚く御礼申し上げるとともに、今後とも日浦の子どもたちに変わらぬ御支援を賜りますことをお願い申し上げます。